【映画】『遺言、公開』(2025年) ──序列が、全員狂わせる── | ネタバレあらすじと感想

サスペンス/スリラー

◆映画『遺言、公開』の作品情報

  • 監督:英勉
  • 脚本:鈴木おさむ
  • 原作:陽東太郎 漫画『遺書、公開』
  • 出演:吉野北人、宮世琉弥、志田彩良、松井奏 他
  • 主題歌:THE RAMPAGE 「Drown Out The Noise」
  • 配給:松竹
  • 公開:2025年
  • 上映時間:119分
  • 製作国:日本
  • ジャンル:青春、サスペンス・ミステリー
  • 視聴ツール:U-NEXT、自室モニター

◆キャスト

  • 池永柊夜:吉野北人 代表作『東京リベンジャーズ』(2021年)
  • 千蔭清一:宮世琉弥 代表作『恋わずらいのエリー』(2024年)
  • 廿日市くるみ:志田彩良 代表作『かそけきサンカヨウ』(2023年)
  • 赤﨑理人:松井奏 代表作『オールドルーキー』(2022年)
  • 姫山椿:堀未央奈 代表作『ホットギミック ガールミーツボーイ』(2019年)


◆ネタバレあらすじ

🎬 あらすじ

進学校・県立樹海高校の3年2組で起こった、ひとつの悲劇──。
クラスの中で“序列1位”とされ、誰からも一目置かれていた優等生・姫山椿が突然命を絶ちます。
突然の出来事に動揺が広がる中、学校側は彼女の遺書を全員の前で「公開」するという異例の対応を取ります。

遺書には、クラス全員の名前とともに書かれた“序列リスト”が記されていました。
その日から教室の空気は一変します。「自分は何番なのか」「どうしてこの順位なのか」──。
生徒たちの間に疑心と嫉妬が渦巻き、人間関係は崩れ始めます。
平凡な存在だった池永柊夜もまた、椿の死とその裏に隠された真相に巻き込まれていきます。

“真実”とは何か。そして、彼女が本当に伝えたかったこととは──。
これは、ただの学園ミステリーではありません。
若者たちの心の闇と再生を描く、衝撃の青春群像劇です。

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公開された遺書には、単なる序列だけでなく“自分がなぜ死を選んだのか”という暗号のようなメッセージが込められていました。
特に、椿が信頼していた千蔭清一の裏切りが、彼女の心を深く傷つけていたことが明らかになります。

クラス内では次第に暴力的な言動が増し、追い詰められていく生徒も現れます。
一方で柊夜は、椿の死が自殺ではなく、誰かに仕組まれた“誘導された死”ではなかったのかと疑い始めます。

物語が進むにつれて、“序列”という概念そのものが椿の意図とは異なる形で一人歩きしていたことが分かります。
そして終盤、彼女が本当に伝えたかったメッセージ──それは「他人の評価に囚われず、自分の価値を信じてほしい」という切実な願いでした。

最後に明かされる“もうひとつの遺言”が、クラス全員の心に深く突き刺さるのです。

◆考察と感想
この映画『遺書、公開。』は、一見すると学園を舞台にした“青春サスペンス”だが、内実はもっとエグくて鋭い、現代社会に対する強烈な批評になっていた。表面上は「クラスの序列」という設定がミステリーを引っ張っていくけれど、本質は“他人の評価に縛られて生きること”への警鐘に近い。
まず、物語の軸となる「序列」は、観る者にとって非常に耳が痛いテーマだ。SNSでのフォロワー数、偏差値、人気、年収──現代人が無意識に受け入れてしまっている“数値化された価値”そのものだ。学校という閉じた空間でそれを突き付けられた高校生たちは、否応なくそれに振り回される。1位であることに安堵する者、下位に怒る者、中途半端な位置に不安を覚える者……誰もが椿の遺書によってむき出しの自己と向き合わされる。これは高校生たちの話だけど、俺たち大人も多かれ少なかれ、常に“見えない順位”に支配されてる。
主人公・柊夜の存在も面白い。彼は序列にも特にこだわりのない、ごく普通の生徒。でも、椿の死をきっかけに彼の中にも「自分とは何者か」という問いが生まれていく。この成長過程が実にリアルだ。大人びた言葉ではなく、あくまで高校生の不器用で純粋な視点で綴られているからこそ、彼の心の揺らぎに共感できた。
そして椿。彼女は“序列1位”という立場にいながら、自分の価値が他人の目によって決められてしまうことに恐怖していた。誰もが羨むような優等生だったはずなのに、彼女の遺書には深い孤独が刻まれていた。遺書を「公開」するという選択が、単なる復讐ではなく、むしろ最後の“教育”だったという構造が、この映画を単なる学園スリラーで終わらせない大きな要因だ。序列はただの紙の数字にすぎない。だが、人はそれに意味を見出してしまう。そうして他人を見下したり、自分を責めたりする。その連鎖を断ち切るために、椿は命と引き換えに「問い」を投げかけたのだ。
演出面でも秀逸だった。校舎の中にじわじわと広がる空気の変化、黒板に書かれる名前、スマホで広がっていく噂。無音のシーンが何よりも怖い。音楽や編集に頼らず、生徒たちの表情だけで「空気の変化」を感じさせる技術には鳥肌が立った。観ているこっちまで教室の片隅に座っているような錯覚に陥るほどだった。
また、“誰もが加害者になりうる”というテーマが全編を貫いていたのも印象深い。椿を傷つけたのは、明確な悪意だけじゃない。ちょっとした言葉、何気ない態度、沈黙──それらすべてが彼女を追い詰めた。この構図はまさに現代的だ。SNSでも、誰かの一言が誰かの人生を壊してしまうことがある。この映画はその危うさを、学園というミニチュア社会の中で忠実に再現している。
結末では、椿のもう一通の遺言が明かされ、序列の意味そのものがひっくり返される。「評価されること」は呪いにもなり得る。そのメッセージを突き付けられたとき、俺は背筋がゾクッとした。あの最後の一言で、この映画のすべてが昇華された気がした。彼女の死は無駄ではなかったし、それを受け止めて歩き出すクラスメイトたちの姿が、どこか眩しかった。
エンタメとしての完成度も高く、それでいて心に重くのしかかる。観終わったあとも、何度もあの教室の空気を思い出してしまう。それほどまでに、この映画は俺の心の中に“何か”を残していった。
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■モテ男目線での考察
この映画、モテる男が観るべき理由は明確だ。人の心の機微を知ること、それが本当のモテに繋がるからだ。見た目や地位じゃない。誰かの言葉に傷ついたり、無意識の態度で誰かを傷つけてしまったり──そんな「見えない感情」に気づける男が、結局は一番モテるんだよ。『遺書、公開。』は、それを教えてくれる。ちゃんと観て、ちゃんと受け止めろ。それが“気づける男”への第一歩だ。
◆教訓・学び
他人の評価に惑わされず、目の前の人の本音を見抜ける男が、一番モテる。

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他人の評価に押し潰され、自分を見失っていく若者たち。
『遺書、公開。』と同じく、社会や周囲からの無言の圧力が人をどう変えるのかを描いた、静かな狂気が胸に迫る心理サスペンスです。

◆評価

項目 点数 コメント
ストーリー 18 / 20 侮るなかれ、学園もの!
演技 18 / 20 皆、相当練習したとか、元々演技がうまい子ばっかりだった。棒読みっぽい人がそんなに居なかったのは良かった。
映像・演出 17 / 20 どうしても、学校の教室での会話がメインだったのがちょっと切羽詰まった。
感情の揺さぶり 18 / 20 どうなるんだろう、どういう展開で終わるんだろうと思った。その意味では作品の中に入れた。
オリジナリティ・テーマ性 18 / 20 原作が漫画でしっかりあったせいか、場当たりな感じが無かった。
合計 89 / 100 探偵もののような謎解きな要素が強かったので、学園ものを好んで観ている人にはちょっと違う作品だと言いたい。

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