【映画】『ロストブレッド2』(2022年) 奪われた絆、止まらない怒り──正義はタイヤの焼け跡に残る | ネタバレあらすじと感想
🔍 作品情報
- 原題:Balle perdue 2 / Lost Bullet 2: Back for More
- 公開:2022年11月
- 監督・脚本:ギョーム・ピエレ
- 脚本・出演:アルバン・ルノワール
- 出演:ステフィ・セルマ、パスカル・アルビロ 他
- 配給:Netflix
- 上映時間:99分
- 製作国:フランス
- ジャンル:サスペンス、アクション、ドラマ
- 視聴方法:Netflix(吹替/字幕)
👥 キャスト
- リノ:アルバン・ルノワール 代表作『ロストブレッド』(2020年)
- ジュリア:ステフィ・セルマ 代表作『ロストブレッド』(2020年)
- アレスキ:ニコラ・デュヴォシェル 代表作『ポリス』(2011年)
- モス:パスカル・アルビロ 代表作『ロストブレッド2』(2022年)
- アルバロ:ディエゴ・マルティン 代表作『REC/レック3 ジェネシス』(2012年)
📝 あらすじ
前作『ロストブレッド』の事件から数か月後。主人公リノは、警察の麻薬捜査班に加わり、弟と恩人を殺した犯人を追って奔走します。改造車を駆使したアクションと、復讐と正義のはざまで揺れる彼の葛藤がスリリングに描かれます。
◆ここからネタバレあらすじです
前作『ロストブレッド』の事件から数か月が経過しました。元犯罪者でありながら車両改造の天才だったリノは、親友であり恩人でもあったシャラスの死をきっかけに、警察の麻薬捜査班に本格的に加わることになります。彼の目的は、弟クインとシャラスを殺した真犯人を突き止め、正義の名のもとに復讐を果たすことでした。強い決意を胸に、リノは誰の指示にも従わず、ただ自分の信じるやり方で真実を追い続けていきます。
シャラスの死後、ジュリアが新たなリーダーとなり、麻薬捜査班を再編成しました。リノとジュリアの関係は一線を越えるような緊張感と信頼で結ばれており、互いを信じて危険な任務に立ち向かいます。新チームは、南フランスを拠点とする麻薬カルテルの壊滅に乗り出しますが、その捜査の中で、警察内部に深く根を張った腐敗と隠蔽体質が露見し始めます。
リノの標的は、かつて麻薬組織と癒着していた警察幹部のアレスキです。表向きには失脚したはずの男が、裏では今もカルテルとつながっていることが判明します。リノは単身でアレスキの行動を追跡し、過去の事件を掘り起こしながら証拠を積み上げていきます。彼のトレードマークともいえる改造車は、まるで戦闘車両のような装備を施されており、何度となく銃撃戦やカーチェイスを乗り越え、リノは確実に真実に近づいていきます。
捜査の過程で、リノは弟の死の真相にもたどり着きます。弟クインはアレスキの命令で消されたのではなく、汚職に加担していた別の幹部に殺された可能性が浮上します。しかもその幹部は、現在も警察内で一定の権力を持っており、真実を明らかにすることが非常に危険な行為だと判明します。ジュリアはリノに「復讐に取りつかれるな」と忠告しますが、リノは過去と向き合いながら、あくまで自分のやり方で正義を貫こうとします。
物語の中盤では、警察署内の裏切りや情報漏洩が続発します。リノは身内すら信じられない状況の中、孤独に戦い続けることを強いられます。一方で、ジュリアもまた、自分の部下たちが裏でアレスキに通じていたことに衝撃を受け、次第に精神的に追い詰められていきます。そんな中、ふたりは互いに支え合い、冷静さを失わずに作戦を進めていきます。
終盤では、リノが自ら仕掛けた罠によって、裏切り者の正体が明らかになります。そしてアレスキとの激突が避けられない状況に突入します。工場地帯を舞台にした大規模なカーチェイスと銃撃戦が繰り広げられ、リノの改造車は重機や警察車両を次々と押しのけながら突き進みます。追い詰められたアレスキは、リノの弟の死に関してすべてを白状しようとしますが、その直前に仲間から裏切られ命を落とします。
ラストシーンでは、リノがシャラスの墓前に立ち、「俺はもう逃げない」と語りかけます。そしてジュリアと共に、新たな捜査の一歩を踏み出します。復讐から正義へ。怒りから使命へ。変わりゆくリノの姿が、静かな余韻とともに描かれ、物語は幕を閉じます。
🧠 考察と感想(淀川長治風)
皆さまこんにちは。さて本日はですね、フランス発の超ド級カーアクション映画『ロストブレッド2』をご紹介しましょう。いやあ、これがまたすごい。前作も相当なド迫力でしたが、今回はさらにパワーアップ。なんというか、観てるこちらの心臓までエンジン音で振動するような、そんな作品でございました。
まず主人公のリノくん。この男がね、ただの復讐心に突き動かされる男ではないのです。弟を殺され、恩師も奪われ、それでもなお彼が車に乗り込んでアクセルを踏み込むのは、ただの怒りではない。そこには、失ったものをどうにかして取り戻したい、そして二度と繰り返させまいとする強い信念があるのですねぇ。
リノの改造車、これがまたすごい。いやもう、まるでモンスター。鉄板を打ち付け、バンパーの先には衝撃吸収材、いや破壊用かもしれません(笑)。その車で突っ込んでいく、撃たれても砕かれても突き進むその姿、もうこれは“車版ランボー”とでも申しましょうか。スピードと破壊のカタルシスに、思わず拍手してしまいましたよ。
でもね、私がいちばん注目したのは、そのスピードの裏にある“静”の描写でございます。ジュリアという女性がいますね。彼女がリノの暴走を止めようとする、いや共に進もうとする姿、その関係性がなんともいえず美しい。アクションの中に、しっかりと人間ドラマが息づいている。これがこの作品の素晴らしさでございます。
そして終盤の対峙。宿敵との決着。リノは銃を構えながらも撃たない。あの瞬間、私は泣きそうになりましたよ。ああ、これが人間の選択だと。正義とは何か。復讐とは何か。それを問いかける作品でもあるのですなぁ。
いやもう、ほんとに皆さんね、ただのアクション映画と思って見てはいけません。これはね、「怒り」をどう制御するか、「喪失」をどう超えるか、まるで哲学的な問いがタイヤの焼け跡と共に残る映画でございました。
さぁ皆さん、スピードに身を任せつつ、心の中ではブレーキを握っておいてください。では、ごきげんよう。さよなら、さよなら、さよなら。
💡 教訓
正義とは、怒りに任せて引き金を引くことではなく、痛みを抱えてもなお理性を選ぶことである。
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