🎬 映画『ヤクザと家族』の作品情報
- 英題:The Family
- 監督・脚本:藤井道人
- 出演:綾野剛、舘ひろし、尾野真千子、北村有起哉、市原隼人 他
- 主題歌:millennium parade「FAMILIA」
- 配給:スターサンズ、KADOKAWA
- 公開:2021年1月
- 上映時間:136分
- 製作国:日本
- ジャンル:ドラマ、ヤクザ・任侠映画、ネオノワール
- 視聴ツール:Netflix(自室モニター)
🎭 キャスト
- 山本賢治:綾野剛 代表作『新宿スワン』(2015年)
- 柴咲博:舘ひろし 代表作『あぶない刑事』(1986年〜)
- 工藤由香(みゆき):尾野真千子 代表作『そして父になる』(2013年)
- 中村努:北村有起哉 代表作『孤狼の血 LEVEL2』(2021年)
- 木村翼:磯村勇斗 代表作『劇場版 今日から俺は!!』(2020年)
📖 ネタバレあらすじ
『ヤクザと家族 The Family』(2021年)は、3つの時代――1999年、2005年、2019年を通して、一人のヤクザの男が「家族」という存在に希望を抱きながら、暴力と社会の狭間でもがき続ける姿を描いた人間ドラマです。主人公の山本賢治は、孤独の中でヤクザの世界に足を踏み入れながらも、自らの「居場所」としての家族を求め続けます。この作品は、暴力団という存在の変遷や、社会の変化、そして償いと再生というテーマに真摯に向き合った作品です。
以下、ネタバレありです。
物語の始まりは1999年、港町・煙崎市。父親の葬儀に金髪姿で現れた賢治は、すでに社会から逸脱した存在として、マル暴刑事の大迫から説教を受けます。彼は柴咲組という地元の暴力団に目を付けられるものの、初めは断ります。しかし、薬物絡みのトラブルで命の危機に直面した賢治は、柴咲の名刺によって命拾いし、結果的に組へと身を寄せていきます。
その後、柴咲組の若頭補佐として台頭した賢治は、同じ組の仲間や、韓国食堂「オモニ」の店主・愛子とその息子・翼、そしてホステスの工藤由香との関係を通して、擬似的な家族のような絆を築いていきます。しかし、2005年、侠葉会との抗争が激化し、仲間が命を落とす事件が発生。報復を決意した賢治は、親友・中村を庇うために罪を被り、14年間の懲役刑に服すことになります。
2019年、出所した賢治を待っていたのは、暴力団対策法の強化によって激変した現実でした。かつてのようにヤクザとしての影響力を持つことはできず、社会からは徹底的に排除されていきます。かつての仲間・細野はすでに堅気になり、翼も半グレとして独自の組織を築いていました。唯一の心の支えであった工藤も娘・彩とともに新たな生活を送っており、賢治との再会に複雑な感情を抱きます。
特に賢治が直面したのは、出所後に待ち受けていた「社会からの排除」でした。かつては「親分」として慕われた存在が、今ではコンビニでの就職すら断られる対象です。ヤクザは刑期を終えても“反社会的勢力”として扱われ、携帯電話や銀行口座の契約、賃貸住宅の入居もできない「5年ルール」に縛られていました。更に、工藤との再会が報じられたことで、SNSを通じて瞬く間に情報が拡散され、事実と異なる憶測までもが書き込まれます。市役所には苦情の電話が相次ぎ、娘・彩の学校にも噂が広まり、工藤親子は心ない世間の目に晒されてしまいます。
そんな中でも、賢治はなおも再起の道を探し続けます。細野の紹介で産廃業者で働きながら、工藤親子と家族として暮らせる未来を夢見ていました。懸命に汗を流し、静かに社会の中で生きようとする彼の姿には、かつての荒々しいヤクザ像とは異なる、穏やかで人間らしい一面が浮かび上がります。しかしその姿をも、社会は許しません。過去の一枚の写真が「現代の晒し者」となり、賢治の存在は“迷惑”として切り捨てられてしまうのです。それでも、彼が最後まで貫いたのは、家族への想いでした。「誰かとともに生きたい」という当たり前の願いを持ちながら、賢治は静かに、そして確かに「人間」として生きようとしていたのです。
一方、翼は侠葉会との因縁のなかで、自分の父の死にまつわる真実に近づいていました。そして、加藤と大迫の癒着を知った賢治は、自らの命を懸けて過去と決着をつけることを決意します。彼は単身で加藤と大迫が会食する場に乗り込み、血まみれの死闘の末、命を散らしていきます。
物語は冒頭の「海に沈む男」のシーンに回帰し、全ての始まりと終わりが重なります。
数日後、埠頭を訪れた翼のもとに彩が現れ、「お父さんって、どんな人だったの?」と問いかけます。翼はその問いに、涙ながらに「少し話そっか」と優しく答え、2人は海辺に並んで座るのでした。
🧠 考察と感想(淀川長治風)
みなさん、こんにちは。今日はね、ちょっと心に刺さる一本をご紹介しましょう。『ヤクザと家族 The Family』――これはね、ただの任侠映画じゃございません。ええ。拳で語る時代はもう終わったんです。今はね、「どう生きるか」「誰と生きるか」が問われる時代。そんな今だからこそ、この作品は観てほしいんですねぇ。
綾野剛さん演じる山本賢治。もうね、この男が悲しいの。生まれも育ちもろくじゃない。父はヤクザ、本人もまたその道に引きずり込まれていく。だけどね、ただの不良じゃないんです。彼の中には、ちゃんと人を想う気持ちがある。それがね、沁みてくるんです。
そして舘ひろしさん、いいんですわぁ〜。演じる柴咲組長がね、まるで戦後の父親のようで。厳しいけど温かい。男が男を引き上げる、そんな背中を見せてくれるんですねぇ。こういうの、最近の映画には少ない。
物語は三つの時代をまたいで描かれます。1999年、2005年、2019年。ヤクザが時代から追い詰められていくんです。暴対法でね、銀行口座もスマホも持てない。「5年ルール」なんて、いや〜恐ろしいですなぁ。社会は、彼らを人間扱いしないんです。
でもねぇ、ここで描かれるのは「ヤクザの悲劇」じゃない。「人間の孤独」なんですよ。山本はね、家族を求めていた。愛子の息子・翼に父親のように接し、由香という女性に愛を乞う。でも、社会は許さない。彼が誰かを想えば想うほど、その人たちが不幸になるんです。
ああ、これはね、つらいです。だけどね、目を背けちゃいけない。社会の仕組みが、過去に生きた人間にどれだけ冷たいのか。その現実を、私たちは知る必要があるんですねぇ。
最後のシーン、あれはもう泣けました。「お父さんって、どんな人だったの?」――ええ、答えられますか?自分が失った誰かを、他人に説明できますか?山本という男は、自分の命と引き換えに、誰かの未来を守ろうとしたんです。これ、立派なことですよ。
ねぇ、みなさん。この映画はね、暴力じゃなくて、心の叫びなんです。ぜひ、ご覧になってください。そして「家族とは何か」「生きるってどういうことか」、少しでも考えていただければ嬉しいです。
映画って、本当に素晴らしいものですねぇ。
さよなら、さよなら、さよなら。
📌 教訓・学び
『家族を求める心は、人を壊しもすれば、救いにもなる』——そんな矛盾に満ちた人間の姿が、この映画には描かれています。