【映画】『アンセイン ~狂気の真実』(2018年) 現実か妄想か? 彼女の正気が試される、衝撃のサイコスリラー | ネタバレあらすじと感想

スリラー

🎬 映画『アンセイン ~狂気の真実』の作品情報

  • 原題:Unsane
  • 監督:スティーヴン・ソダーバーグ
  • 出演:クレア・フォイ、ジョシュア・レナード、ジェイ・ファロー 他
  • 配給:フィンガープリント・リリーシング、ブリーカー・ストリート、20世紀フォックス
  • 公開:2018年3月
  • 上映時間:98分
  • 製作国:アメリカ
  • ジャンル:サイコスリラー、ホラー要素を含むスリラー、ミステリー
  • 視聴ツール:Netflix、吹替、自室モニター

🎭 キャスト

  • ソーヤー・ヴァレンティーニ:クレア・フォイ
    代表作:『ザ・クラウン』シーズン1〜2(2016〜2017年)
  • デヴィッド・ストライン:ジョシュア・レナード
    代表作:『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』(1999年)
  • ネイト・ホフマン:ジェイ・ファロー
    代表作:『サタデー・ナイト・ライブ』(2010〜2016年)
  • ヴァイオレット:ジュノー・テンプル
    代表作:『マレフィセント』(2014年)
  • アンジェラ・ヴァレンティーニ(母):エイミー・アーヴィング
    代表作:『キャリー』(1976年)

📖 ネタバレあらすじ

ソーヤー・ヴァレンティーニは、過去のストーカー被害の影響を引きずりながらも、新天地で仕事と生活を立て直そうとしている若い女性です。聡明で芯の強い彼女でしたが、不安を抱えた日々が続いていました。ある日、ソーヤーは自身の心の不調に向き合うため、地元の病院でカウンセリングを受けることにします。しかし、その面談で「自殺を考えたことがある」と話したことで、彼女の人生は予期せぬ方向に転がっていきます。

病院のシステムによって、ソーヤーは本人の意思に反して精神病棟に強制入院させられてしまったのです。自分は正気だと訴えるものの、その叫びは誰にも届かず、彼女の不安は恐怖へと変わっていきます──。

⚠️ ここからネタバレありです

入院初日、ソーヤーは他の患者との衝突をきっかけに、当初1日の予定だった拘束が1週間に延長されてしまいます。さらに追い討ちをかけるように、清掃員として病院に現れたのは、かつてソーヤーを執拗にストーキングしていた男・デヴィッドだったのです。

ソーヤーは彼の存在に気づき、恐怖を募らせながらも職員に危険を訴えますが、誰にも信じてもらえません。彼女の言動は妄想として片づけられ、鎮静剤を多量に投与されてしまいます。しかもその薬の投与量は、デヴィッドの不正な介入によって意図的に増やされていたのです。

病院で唯一信頼できる存在となったのは、薬物依存から更生中のネイト・ホフマンでした。彼はこの病院が「保険金目当てに正常な人間まで入院させている」と語り、ソーヤーの苦しみを理解してくれます。

2人は協力関係を築き、携帯電話を密かに使って外部に助けを求めようと試みますが、デヴィッドに会話を盗み聞きされていたことから、事態はさらに悪化します。病院も警察もまともに取り合ってくれず、ソーヤーは孤立無援のまま、狂気の罠に追い込まれていくのです。

果たして、彼女は自分の正気を証明し、この閉ざされた悪夢から抜け出すことができるのでしょうか──。

🧠 考察と感想(淀川長治風)

皆さん、こんばんは。今夜ご紹介いたしますのは、2018年のアメリカ映画『アンセイン ~狂気の真実~』でございます。ええ、もうね、この作品、ちょっと気がふれるほど面白いですよ。怖い映画? いいえ、これは怖いなんてものじゃありません。“現実とは何か、狂気とはどこから来るのか”を我々に突きつけてくるのです。ゾクリと背中をなでられるような、そんな不気味な感覚。今夜はその魅力を、じっくり味わっていただきましょう。

主人公のソーヤーさんね、たいへん真面目で頑張り屋の女性なんです。でもね、過去にストーカーの被害に遭ったことが、心に大きな影を落としている。それが原因で、ふっと自分でもわからなくなることがあるんですね。そして、助けを求めた病院で、思わぬ展開に巻き込まれていくわけです。なんと、入院させられてしまう。ご本人はいたって正気、でも周囲の目には“危ない人”と映ってしまう。さあ、ここが恐ろしい。

実はね、この映画、全編iPhoneで撮影されているんです。驚きでしょう? これがまた、あのざらざらした画質が、彼女の不安や疑念をまざまざと映し出して、観ている私たちも「え、これは夢? 現実?」と惑わせてくれるのです。監督のスティーヴン・ソダーバーグさん、いやはやお見事。

それから、あのストーカー男。ジョシュア・レナードさんが演じておられますけど、これがまた何とも気味が悪い。目をそらしても、背中に貼り付いてくるような存在感。ここにはね、「被害者の訴えが信じられない世界」の恐ろしさがあるんです。ソーヤーがどれだけ「彼がいる!」と叫んでも、誰も信じない。逆に薬を打たれてしまう。これはね、“正気”というものがいかに脆いかということを教えてくれるんです。

そしてね、この映画にはもう一つのテーマがございます。医療ビジネスの闇です。正気かどうかではなく、「保険が降りるかどうか」で患者を受け入れる。これはね、単なるフィクションとして見てはいけません。私たちの社会にも似た構造があるのではないかと、思わず背筋を伸ばしてしまいます。

また、ソーヤーとネイトの関係も良かった。狂気の中で見つける人間らしさ、信頼、そして希望。あの小さなやり取りが、観る者の心を温かくしてくれるのです。絶望の中でも誰かが手を差し伸べてくれる、そういう希望がちゃんと描かれている。これもまた、いい映画の証拠です。

最後に申し上げたい。『アンセイン』という映画は、単なるスリラーではございません。観る者の心の奥底にひそむ“不安”を掘り起こす心理ドラマであり、現代社会に対する静かな怒りと問いかけなのです。

どうぞ皆さま、映画をご覧になったあとは、お布団に入る前に少しだけ考えてみてください。「もし自分が彼女の立場だったら」と──。それでは、また来週。さよなら、さよなら、さよなら。

🌱 教訓・学び

『現実と狂気の境界は、他人の目によっていとも簡単に塗り替えられる』


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