【映画】『アオラレ』(2020年) 追い越した相手は、常軌を逸した怒りの化身──常識が崩れる“あおり”スリラー | ネタバレあらすじと感想

サスペンス/スリラー

◆映画『アオラレ』の作品情報

  • 【原題】Unhinged
  • 【監督】デリック・ボルテ
  • 【脚本】カール・エルスワース
  • 【出演】ラッセル・クロウ、カレン・ピストリアス 他
  • 【配給】ソルスティス・スタジオズ、KADOKAWA
  • 【公開】2020年
  • 【上映時間】93分
  • 【製作国】アメリカ
  • 【ジャンル】サスペンス、スリラー、アクション
  • 【視聴ツール】U-NEXT、吹替、自室モニター

◆キャスト

  • トム・クーパー:ラッセル・クロウ 代表作『グラディエーター』(2000年)
  • レイチェル・フリン:カレン・ピストリアス 代表作『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(2015年)
  • アンディ・フリン:ガブリエル・ベイトマン 代表作『チャイルド・プレイ』(2019年)
  • フレッド:ジミ・シンプソン 代表作『ウエストワールド』(2016年〜)
  • デボラ・ハスブロック刑事:アン・リー 代表作『グッド・ドクター 名医の条件』(2017年〜)

◆ネタバレあらすじ

朝のラッシュで渋滞が続く市街地。シングルマザーのレイチェルは、息子を学校へ送り届ける途中、仕事の遅刻や離婚調停など、心身ともに追い詰められていました。そんな中、ある交差点で彼女は信号待ち中の車をクラクションで急かしてしまいます。何気ないこの行動が、思いもよらぬ悪夢の引き金になるとは、彼女は知る由もありません。

クラクションを浴びせられた男、トム・クーパーは、精神的に不安定で、社会から疎外されていた人物。無言でレイチェルに謝罪を求めた彼ですが、彼女はそれを拒み、無視して走り去ってしまいます。それが、彼の中に眠っていた凶暴な怒りを呼び覚まし、執拗な追跡と報復が始まります。

本作は「あおり運転」という現代社会の身近な恐怖を題材にし、リアルなスリルと予測不能な展開が特徴です。日常に潜む狂気が、ある朝突然襲いかかる――そんな恐ろしさを、観客にじわじわと突きつけてきます。

ここからネタバレありです(クリックで展開)

レイチェルに無視されたことで完全に逆上したトム・クーパーは、彼女のスマートフォンを盗み、個人情報をもとに家族や友人に危害を加え始めます。最初の標的は、レイチェルの親友である弁護士のアンディ。カフェで彼を待ち伏せし、冷酷に命を奪います。

次にトムはレイチェルの自宅を突き止め、兄や甥にまで危険が及びます。逃げ場のない状況の中で、レイチェルは自身の身と息子を守るため、必死に反撃を試みます。怒りに支配されたトムとの息詰まるカーチェイス、暴力、そして知略の応酬が展開され、ラストに向けて緊張感は最高潮へ。

最終的に、レイチェルは冷静さと母親としての強さを武器に、トムとの決着をつけます。映画は、日常の中に潜む怒りの連鎖とその危険性を鋭く描き出し、観る者に「怒りへの対処」の在り方を問いかけながら幕を閉じます。

◆考察と感想

正直、舐めてた。最初は「ありがちな“あおり運転スリラー”だろ」と思って軽い気持ちで観た。だが、蓋を開けてみれば予想以上にリアルで、グロくもないのに胃が締めつけられるような緊張感にやられた。ラッセル・クロウ演じる“怒れるおじさん”が、もう本気でヤバい。重くて、鈍くて、感情が読めない。殺気というより、“なにをしでかすか分からない”得体の知れなさが怖い。

物語はシンプルだ。シングルマザーのレイチェルが朝の通勤中に、ちょっとクラクションを鳴らしただけで、とんでもない地獄を見せられる。日常の些細な苛立ちが、まさかここまで暴力的なカタストロフになるとは――それがこの映画の一番の恐怖だと思う。

ラッセル・クロウの役は、いわゆる“典型的な悪人”ではない。むしろ、冒頭のシーンで彼が家庭や仕事を失い、すでに心が壊れていることがほのめかされる。この社会に見放された男が、最後にしがみついた“怒り”という感情だけを武器に暴走していく様は、胸が苦しくなる。ある意味で「怒りの持つ感染力」や「無視されることの恐怖」を描いた現代の寓話なんじゃないかと思った。

レイチェルもただの被害者じゃない。彼女もまた、社会のストレスに押しつぶされそうになっていた一人。仕事に遅刻しそうで焦り、元夫とのトラブルに悩み、息子との距離に苦しんでいる。その中での、たった一度の“クラクション”が引き金になる。俺たち誰もが日常でやりそうな行動だ。だからこそ、この映画は怖い。どこにでもある日常が、ある一線を越えることで“戦場”になる。その変化があまりにもスムーズでリアルだからこそ、観ていてしんどい。

あと特筆すべきは演出のテンポだ。序盤からジワジワと迫りくる恐怖が、途中から一気に爆発し、緊張感が途切れない。カーチェイス、暴力シーン、スマホハッキング、家族への攻撃…。どれも現代社会の“あるある”が織り交ぜられていて、妙にリアルだ。そして何より、観終わったあとに「明日からクラクション鳴らすのやめよう」と本気で思った自分がいた。そう、これは教訓の映画だ。怒りの連鎖がいかに危険で、取り返しのつかない破壊を生むか。まるで警告のように響いてくる。

作品としては派手さはないが、緻密な心理描写とラッセル・クロウの怪演が光る。決してエンタメ一辺倒ではない、深いメッセージを内包したサスペンス映画だ。俺は「怖い」より「刺さる」映画だと感じた。

◆考察/もて男視点

人間関係に余裕のある“もて男”として言わせてもらうと、この映画は「共感力の欠如」が生んだ悲劇だな。クラクション一つで逆上するのも、無視で挑発するのも、相手の感情に想像力を働かせてない証拠。怒りより、余裕と寛容さがモテの本質。つまりこの映画、非モテの極地を描いた社会寓話だよ。

◆教訓・学び

モテるとは、怒りに支配されず、他人の感情に想像力を持てる余裕のことだ。

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