映画『かくしごと』(2024年)
🎬 作品情報
- 監督・脚本:関根光才
- 原作:北國浩二
- 出演:杏、中須翔真、佐津川愛美、奥田瑛二 他
- 配給:ハピネットファントム・スタジオ
- 公開:2024年
- 上映時間:128分
- 製作国:日本
- ジャンル:ヒューマンドラマ、サスペンス、ミステリー
- 視聴ツール:Amazon Prime、自室モニター
👤 キャスト
- 里谷千紗子:杏
代表作:『バースデー・ワンダーランド』(2019)、『キングダム 運命の炎』(2023) - 犬養洋一/里谷拓未:中須翔真
代表作:『さかなのこ』(2022) - 野々村久江:佐津川愛美
代表作:『毒娘』『バジーノイズ』(2024)、『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』(2007) - 亀田義和:酒向芳
代表作:『検察側の罪人』(2018)、『半分、青い。』 - 犬養安雄:安藤政信
代表作:『バトル・ロワイアル』(2000)、『サトラレ』(2001)
📖 あらすじ
絵本作家の里谷千紗子(杏)は、長年絶縁していた父・孝蔵(奥田瑛二)の介護のため、渋々故郷に戻る。他人のような父との同居に疲弊していたある日、記憶を失った少年を助け、その身体に虐待の痕を見つける。彼女は衝動的に「自分の息子」だと嘘をつき、“拓未”と名付けて暮らし始める。ぎこちないながらも3人は徐々に心を通わせ、“家族”のような日々が始まる。
──ここからネタバレありです。
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少年の正体は犬養洋一。暴力的な実父・安雄に追い詰められた彼は、ついに父を刺し殺してしまう。千紗子は少年を守るために、あたかも自分が犯人のように偽装する。しかし裁判で少年は「自分がやった」と証言し、さらに「千紗子さんが僕の母です」と言い切る。
その言葉は偽りでありながら、彼女の愛を受け取った少年なりの“かくしごと”だった。裁かれることなく、少年は施設へ。千紗子は新たな絵本を描き始める。それは、嘘と真実、そして救いを込めた物語だった。
🧠 考察と感想
『かくしごと』を観終えて、俺は動けなかった。これはただの感動話じゃない。誰かを守るための“嘘”が、どれほど深くて重いものか、静かに突きつけてくる映画だった。
千紗子の嘘は、一線を越えていた。でもそれは利己的な偽りじゃない。誰かの心を支えるために、どうしても必要だった嘘なんだよ。
人は時に、相手のためにつく嘘を選ぶ。それが許されないことだとわかっていても、正しさよりも温もりを選びたくなる瞬間がある。千紗子にとって、あの少年は喪った息子の代わりではなかった。彼女自身の喪失を埋める存在であり、誰よりも自分を必要としてくれた“いま”の家族だった。
そして物語は、ただの擬似家族の温かな日常で終わらない。少年の実父・安雄が現れた瞬間に、すべてが現実へと引き戻される。そこからの展開はまさに胸が苦しくなる。少年が刺してしまった実父。血まみれの床に倒れる男。包丁を手にした千紗子。彼女は“また”嘘をついた。今度は自分が犯人だと。
その選択が母性なのか、逃避なのか、自己犠牲なのか、観る者の解釈によって変わるだろう。でも俺は「強さ」だと思った。守りたかったんだろう。真実じゃなくて、少年の未来を。
そして迎える裁判シーン。少年が言う。「僕がやった。千紗子さんが、母です」と。ここで完全に崩壊した。子どもは全部わかってたんだ。彼女の嘘も愛も。彼自身が千紗子を守ったんだ。あの言葉は嘘だったかもしれない。でも、あの瞬間にだけ宿った「真実の家族の形」だったと思う。
この映画は、善悪のジャッジをする作品じゃない。観客に「それでも、あなたは嘘を責められるか?」と問いかけてくる。
俺はこの作品を観て、「本当の家族」とは何かを考えた。血じゃない。法でもない。そこに愛があって、守りたいという想いがあるなら、それは家族だ。
人間の弱さと強さ、偽りと真実が交差する中で、それでも人は誰かとつながっていたいと思う。その不完全さが、妙にリアルで、胸を打った。俺の中では2024年ベストの1本。静かで、重くて、でも最後にはちゃんと光が差してくる。
とくに印象的だったのは、絵本作家としての千紗子の姿だ。言葉でなく、物語で何かを残そうとするその姿勢に、作り手としての強さも感じた。あの絵本のラストシーンが、この物語に静かで確かな希望を与えていた。あれが彼女のかくしごとであり、少年へのラブレターだったのだと思う。
💘 モテ男目線の考察
この映画、モテる男が観たらどう感じるかって? 一言で言うなら「人の痛みがわかるやつは強い」ってこと。嘘をついてでも守りたいものがある女を、正しいかどうかじゃなくて理解できる男。そういうやつがモテるんだよ。感情を察して寄り添う力、そこに魅力がある。モテたいなら、“正解”より“共感”を選べ。
⭐ 映画評価
項目 | 点数 | コメント |
---|---|---|
ストーリー | 13 / 20 | 本作は秀逸だった。いろいろ考えさせられるという意味で。 |
演技 | 19 / 20 | 素晴らしい。全てが。 |
映像・演出 | 14 / 20 | 田舎は緑がキレイですな。 |
感情の揺さぶり | 18 / 20 | 杏主演だからハズレなし。これはやられた。 |
オリジナリティ・テーマ性 | 16 / 20 | 似たテーマはあるが、表現が丁寧。 |
合計 | 80 / 100 | DVと痴呆、2つの重いテーマをしっかり描いた秀作。 |
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